2008/12/09

DIYと木工、アマチュアとプロの違い

ずいぶん更新をサボってしまった。
この夏に行ったラミネート床について書くつもりだったが、それはまた次回。
DIYや木工をやっていると実際に自分が触れる家具などの製法などが気になる。
これは料理を食べて調理法を思い浮かべるのに似ている。
また人がどのようなDIYや木工をやっているのかもすごく気になるところだ。
インターネットの普及のおかげで趣味のアマチュアだけでなく、熟練のプロの方々までが自分の木工の技をブログなどで披露してくれるのは本当にうれしい限りだ。
先日、いつもチェックしている職人さんのブログでちょっと気になる点があってコメントをしてみたところ、すごく丁寧な返事のコメントをいただいて却って恐縮してしまうくらいだった。
こうやって情報はあふれ返りネット通販で何でも道具は手に入る時代、アマチュアと本当のプロを隔てる壁ってなんだろう。
技術レベルの違いとか職業にしているかだけでなく。

DIYという言葉はDo it yourself、つまり「自分でやる」という意味だ。
本来専門のプロにお願いするところを自分でやってしまう、ということで、例えば車のオイル交換、などもDIYと言えるだろう。
一方でどんなに高度であっても手芸やプラモデル作りはDIYとは言わない。
特に狭い意味では家の内外装や家具などを自分で直したり作ったりすることに使う。
日本語の「日曜大工」という言葉のニュアンスと被る。
DIY、日曜大工、どちらの言葉もアマチュアによる仕事であることを前提としている。
なのでアマチュアであってもDIYや日曜大工と木工の間には結構な隔たりがある気がする。

どうしてDIY(日曜大工)をはじめるかのシナリオを考えてみる。
日本では中学で技術家庭の授業があるし、日米どちらでもホームセンターに行けば工具や材料などが色々揃っている。
そこに自分の家のことでちょっと困っていることがあった場合、少しクリエイティブな人であれば、収納家具やらちょっとしたものを自分で作ってしまおう、と思ってしまったりするものだ。
この場合前提にあるのは既製品が自分のニーズに合わない、ということだ。
もちろん値段が折り合わないこともあるし、寸法や形状など機能的な側面からデザインなど既製品ではニーズが満たせないこともあるだろう。
ただ、真剣にやりはじめると値段を理由にするのはすぐに馬鹿らしくなる。
たとえ安物であっても既製品の家具は見た目はきれいにできているのでその仕上がりを実現するにはいい加減なDIYではだめなのだ。

まずホームセンターの材木売り場に行けば2x4やコンパネなどの規格物の建材やすでにカット済みの板材や棒材などが豊富に並んでいる。
これをちょっと切って釘で止めれば所望の家具の出来上がり、という訳だ。
だがちょっとやってみると分かるが、それではいかにも素人っぽく安っぽいものしかできない。
まず技術家庭で習ったようにのこぎりで切って鉋などを掛けても素人の腕ではどうしても時間が掛かる割りに雑な仕上がりになるのだ。
そして塗装をしないといかにも作りっぱなしな感じがする。
木材の仕上げは結構手間の掛かるものだ。
切断作業ももっと手早くきれいに済ませたい。
木の接合が釘というのも見た目はいまいちだ。
こうして素人が電動工具にはまり、切断、下地作りや、継ぎ手など機械でやり始めようとするわけだ。

この段階でアマチュアはどこまで手を広げるのかを考える必要がある。
最初の電動工具はおそらくドリル、次はジグソーか丸鋸だろう。
更にトリマー(ルーター)やサンダーなどにも手が出てしまうだろう。
ひとつのハードルは据え置き型の道具に手を出すかだ。
据え置き型ということは場所をとる。
たまの休日に使うだけのものにそんなに場所は取れない。
ここら辺でもう、道具への投資や自分の手間隙を考えると、IKEAで売っているような安い家具で間に合うのなら、自分で作ることはまったくペイしないことを自覚することになる。
それでも自分で作ろうと思うからには自分固有のニーズ、そして仕上がり向上への意欲、がモチベーションになってくる。
お金を節約するつもりなら、もう止めた方が良い。

プロの仕事でも実は大工と木工職人にはだいぶ違いがある。
大工というのは家屋の造作をメインにする仕事で、家一軒建てるに当たってその元締めとなる仕事だ。
実際に家が完成するまでには左官、建具、塗装、電気、水道などさまざまな専門家が大工の下で分業して家の細部を仕上げていくのだ。
もちろん大工も木を使って物を作る仕事で基本的なところは共通しているが、木工職人とは少し違う。
英語でも大工仕事のCarpentryは木工Wood workingとは区別されている。
大工仕事、は大きな構造物を組み上げることに主眼があり、仕上がりのきれいな木材加工は主な範疇ではない。
大工仕事は大きな部材を使うことが多く、こうなってくると人手や腕力がないとDIYするのも難しい場合が出てくる。

木工の代表は家具職人ということになるだろう。
家具もタンスや棚、イス、小物とではだいぶ作り方が違ってくるだろう。
だがこの範囲でならある程度クロスオーバーしている印象を受ける。
どちらかというと手作りの度合いによる価格帯の違いのほうが大きいのではないかと思う。
一方の端には巨大企業による大量生産がある。
実際IKEAの家具などは安っぽいといってしまえばそれまでだが、デザインや製法にも多くの工夫が見受けられる。
如何に安く効率よく作りつつ、そこそこの見栄えを実現するかには非常に感心させられる部分も多い。
そしてもう一方の端には一人または数人程度で木工所を営み小ロットの家具製作などをされている木工所がある。
こういったところは大量生産のコストダウンには対抗できないので手作りの小回りと熟練の職人の技が光る高品質でこそ勝負していくのだろう。
翻ってアマチュア木工家を見ると大量生産の大工場とは隔たりがありすぎるので小さな木工所の職人さんには学ぶところが多いと思う。
だがそれでもアマチュアとプロの隔たりは大きい。

DIYをはじめるときにホームセンターで加工済みの材料を買う。
この時点でもう違う。
工場で製材された木材は工業製品とはいえ均質ではない。
ホームセンターでストックされている間にゆがんだり傷ついたり、色々だ。もちろん選り好みをして買うことはできるが、品質はお店の在庫任せということになる。
こういった材料の切断面や平面を基準として何かを作り始めるしかないのが初級アマチュアの悲しさだ。
プロの方は大規模な製材は製材所に任せても本当の製品に加工を始めるまでに湿度の調整をし、木取りを行うときにも仕上げで減る分を想定して部品を作る。
まっすぐな面を作るためにプレーナーやジョインターを通し、正確な面を作っていくのだ。
ここまで踏み込むのは素人にはつらい。
何より時間が掛かり、大きな機械も必要になってしまうからだ。
もちろん中上級に進むべく金も時間もかけられる人は機械を買い、もっと本格的なところで木材を仕入れることになる。

そしてそれでもプロとの間には大きな壁が立ちはだかる。
それは「熟練」だ。
自分やせいぜい友達くらいの範囲のために木工を行う限りそんなに多くの作業をこなすことはないだろう。
しかも悠々自適でもない限り、本業の時間もあるのだから、趣味の木工ばかりにはかまけてはいられない。
これでは量をこなし技を研ぎ澄ますことによっていたるプロの職人の熟練の境地に至ることはどうしてもできない。
趣味が高じてプロに転じてしまう人もあるかもしれないが、険しい道のりではあるだろう。

でもアメリカのホームセンターにはいやになるほど機械も材料も売っている。
それも熟練したプロ向けではない感じがする。
アメリカは人件費が高く、本当の職人の手になる家具は非常に高価だ。
そしてたいした熟練を必要としないちょっとした日曜大工のDIY的仕事もHandymanなどと呼ばれるプロに頼めばそれなりに高価だ。
だから少しでも自分でできることはやってしまいたい、という気分は底流には必ずある。
その気分と手の届かないプロの職人の品質との間でできる限りの工夫を凝らして自分なりの何かを作り出す、それが初級木工アマチュアとしての自分の今の立ち位置だ。